2012年06月20日

波の上ビーチ」役割の多様化

平成24年6月13日

井上 将

「波の上ビーチ」役割の多様化


 「波の上ビーチ」は那覇市唯一のビーチとして市民に開放され親しまれてきました。早朝六時頃から健康志向の高齢者たちが、砂浜・水中ウォーキングやスイミング・ラジオ体操を楽しんでいます。冬場、さすがにスイミングは少なくなりますが、ラジオ体操などが有志ボランティアの世話で十数年も継続実施されています。
ところがこの六月、那覇市からビーチ指定管理者を委託されている那覇市観光協会から早朝スイミングを六月十五日より全面禁止する旨の通達があり、利用者の不満が高まっているのです。
 海水浴場には概念として、今日まで社会から期待されて来た機能や役割がありました。社会変化の波は、それらの既存概念とは別に新たな役割を「ビーチ・海水浴場」に求めてきています。まずは高齢社会の拡大。次は観光客の増加と国際化。波の上ビーチは今この二つの大波にさらされ、ビーチ運営理念の変更を求められているのです。
 日本は2040~50年代に高齢者人口のピークに達すると予測されています。増加を続ける高齢者の多くが介護保険・医療保険を受給すれば財政破綻は確実です。如何にして健常な高齢者人口を拡大するかは国家財政の浮沈を掛けた最重要問題です。介護予防に取り組む高齢者を支援サポートすることは、ビーチ運営の新たで重要な使命であると考えられます。
一方、観光客の増加と国際化は県民の多くが肌で感じている事です。若狭のクルージング船埠頭とビーチは指呼の間。早朝スイミングを希望する国際観光客やクルースタッフの願いは無視されたままです。英語・北京語・ハングルの案内表示もありません。
 ビーチを利用する有志一同は、高齢者・観光客のため早朝六時開場及び、現役世代の健康維持のため午後八時までの開場を要請しています。地場の大人は太陽に肌を焼かれながら泳ぎたくはないのです。ビーチ使用のニーズは確実に変化しています。
那覇市及び関係機関は、社会の要請に適合しなくなった「波の上ビーチ管理条例」「沖縄県水難事故の防止及び遊泳者等の安全の確保等に関する条例」を早急に改定することが第一になすべき事です。その上で必要であれば規制を検討すべきでしょう。
この度の早朝スイミング禁止通達は、国民が望む健常な高齢者育成を阻害し、沖縄県が掲げる観光立県の方針にも適合してはいません。今回の通達がいたずらに対立をあおる結果に終わる事無く、関係条例の現実的改正に繋がることが求められます。


6月18日(月)琉球新報「論壇」に掲載


タグ :那覇市2012

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Posted by 沖縄バリアフリー研究会 at 13:44│Comments(0)オピニオン
 
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